「わかってほしい」
その想いをそっと手放したとき、心がふっと軽くなった。
わたしは母と相性がよくない。
幼稚園の頃から、母の愚痴を聞く係だった。
父のこと、兄弟のこと、おばあちゃんのこと、親戚のこと、家庭のお金のこと、母の実家のゴタゴタ、仕事のこと…。
まだ小さかったわたしは、母の話をひたすら聞き、励まそうとした。
でも、「あんたに何がわかるのよ!?」と、その怒りの矛先はわたしに向くこともあった。
兄弟の仲を悪くするような言葉も浴びた。
「お兄ちゃんがあんたのことこう言ってたよ」
「弟があんたのこと、こう言ってたよ」
そうやって、お互いを疑うようにさせられた。
母を頼りにできた記憶は、ほとんどない。
友達やママ友の家族の話を聞くたびに、「健全な家族って、いいなぁ」と心が空っぽになった。
先日、父が心筋梗塞で倒れた。
術後の様子を見に久しぶりに実家へ帰ろうと思った。
でも些細なことで母と口論になり、結局、帰ることはやめた。
母は、いつも自分中心だ。
「自分が悪い」とは決して思わず、相手が悪いと責め立てる。
そんな母を見て、「ああ、わたしも似てるかもしれない…」と、胸の奥がひやりとした。
でも今回のことで、やっと心から諦められた。
母にわかってもらおうとすること
母に構ってほしいと願うこと
それらは何十年繰り返しても叶わなかった。
だから、もういい。
わたしが、わたしをわかってあげる。
わたしが、わたしの話を聞いてあげる。
わたしが、わたしに構ってあげる。
母との関係で叶わなかったことは、わたしがわたしに叶えてあげればいい。
分かり合えない人と、無理に分かり合おうとしなくていい。
わかってほしいと願う前に、まずは自分が自分をちゃんとわかってあげればいい。
それだけで、生きる世界は少しあたたかくなる。
あなたも、自分を一番の味方にしてあげてほしい。
それが、きっと一番の救いになるから。

あなたの心が、今夜少しでも軽く
やさしく包まれますように。