▨ 「わかってほしい」をやめた日

「わかってほしい」

その想いをそっと手放したとき、心がふっと軽くなった。

わたしは母と相性がよくない。

幼稚園の頃から、母の愚痴を聞く係だった。

父のこと、兄弟のこと、おばあちゃんのこと、親戚のこと、家庭のお金のこと、母の実家のゴタゴタ、仕事のこと…。

まだ小さかったわたしは、母の話をひたすら聞き、励まそうとした。

でも、「あんたに何がわかるのよ!?」と、その怒りの矛先はわたしに向くこともあった。

兄弟の仲を悪くするような言葉も浴びた。

「お兄ちゃんがあんたのことこう言ってたよ」
「弟があんたのこと、こう言ってたよ」

そうやって、お互いを疑うようにさせられた。

母を頼りにできた記憶は、ほとんどない。

友達やママ友の家族の話を聞くたびに、「健全な家族って、いいなぁ」と心が空っぽになった。

先日、父が心筋梗塞で倒れた。

術後の様子を見に久しぶりに実家へ帰ろうと思った。

でも些細なことで母と口論になり、結局、帰ることはやめた。

母は、いつも自分中心だ。

「自分が悪い」とは決して思わず、相手が悪いと責め立てる。

そんな母を見て、「ああ、わたしも似てるかもしれない…」と、胸の奥がひやりとした。

でも今回のことで、やっと心から諦められた。

母にわかってもらおうとすること
母に構ってほしいと願うこと

それらは何十年繰り返しても叶わなかった。

だから、もういい。

わたしが、わたしをわかってあげる。

わたしが、わたしの話を聞いてあげる。

わたしが、わたしに構ってあげる。

母との関係で叶わなかったことは、わたしがわたしに叶えてあげればいい。

分かり合えない人と、無理に分かり合おうとしなくていい。

わかってほしいと願う前に、まずは自分が自分をちゃんとわかってあげればいい。

それだけで、生きる世界は少しあたたかくなる。

あなたも、自分を一番の味方にしてあげてほしい。

それが、きっと一番の救いになるから。

おしまい

あなたの心が、今夜少しでも軽く
やさしく包まれますように。